大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)848号 判決

控訴人 真田万太郎

被控訴人 国

主文

原判決を取消す。

本件を奈良地方裁判所に差戻す。

事実

控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を却下する、控訴費用は控訴人の負担とする、との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴人において、控訴人は昭和二年一〇月二四日心神耗弱者であるとの理由で準禁治産の宣告を受けたものであるが、控訴人は法律科、文学科など高等の学問をも身につけ「徳に導の栞」の著書もあり、また弁護士を依頼せずに独立して訴訟行為を続けうる能力を有するものであるから、準禁治産として放置されるべき理由なくその取消を求める、と述べ、

被控訴代理人において、控訴人がその主張の日に準禁治産宣告を受けたことはこれを認めるが、これが取消を求める本訴請求は不適法であるから却下せらるべきものである、と述べ、乙第一号証を提出した。

理由

按ずるに控訴人は原審に於て準禁治産宣告取消申立と併せて損害賠償請求を求めたことは訴状補充申立書及原審口頭弁論の結果に徴し明らかなところ当審に於て右損害賠償請求を主張せずと述べた。そして控訴人の請求の要旨とするところは、控訴人は昭和二年一〇月二四日心神耗弱を理由として準禁治産宣告を受けたが、控訴人としては心神耗弱者ではなく、何らこれを受くべきいわれはないから、速かに準禁治産宣告の取消を求める、というにあるところ、準禁治産宣告の取消申立事件は、民法第七条第十三条により本人単独で取消申立をなし得べく同事件は家事審判法第九条第一項甲類二の規定により家庭裁判所の専属管轄に属すること明かであるから、原裁判所としては、民事訴訟法第三〇条の精神に則り、本件に関する限りこれを管轄奈良家庭裁判所に移送すべきものと解する

を至当とすべく結局原審がこれを不適法として却下したのは失当たるを免れないから、民事訴訟法第三八七条第三八八条によつて原判決を取消し、原裁判所をして前記手続をとらしめるため、本件を原裁判所に差戻すこととして主文の通り判決する。

(裁判官 藤城虎雄 亀井左取 坂口公男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例